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最終更新日2023/01/13

Vol.6医療・福祉制度、どんな制度が利用できるの?NMOSD患者さんが利用できる制度・サービス

監修:
群馬県難病相談支援センター
難病相談支援員 川尻洋美 先生

第2回
「医療・福祉制度活用モデルケース」

医療・福祉制度やサービスはいつ、どういったタイミングで利用できるのでしょうか。

以下の2つのモデルケースから、ご自分の場合にも利用できそうな制度や制度利用のタイミングなどを参考にしてみてください。

NMOSDの患者さん 
医療・福祉制度活用モデルケース2
後遺症は比較的軽いBさん(40代)の場合

  • 家族:ひとり暮らし
  • 職業:パート社員
  • 世帯の所得の階層区分:一般所得Ⅰ(約160万円~約370万円)

正社員で営業職に就いていたBさんは、1年前、目に違和感があり眼科を受診したところ、脳神経内科に紹介されてNMOSDであるとわかりました。急性期治療の期間とその後の再発予防治療の開始当初は会社をしばらく休みました

幸い急性期治療をすぐに受けることができたので後遺症はあまり残らなかったのですが、毎日疲労感があり、体力面の不安を感じたBさんは、働いていた会社を退職し、デスクワークの仕事を探しました

再発もなく、現在はパート社員として毎日働いていますが、頼れる親族がいないため、もし再発して働けなくなり、今後の生活が厳しくなったらどうすればいいのか心配しています

Bさんが利⽤できる医療・福祉制度
❶ ⾼額療養費制度/限度額適⽤認定証

Bさんのように医療費が高額になったら、健康保険から払い戻される高額療養費制度が利用できます。高額になると事前にわかっていたら「限度額適用認定証」を申請して入手し、病院に提示しましょう。

⾼額療養費制度とは 被保険者ごとの所得による上限を超えた医療費の自己負担分が払い戻される。 申請先:健康保険や国⺠健康保険など

ポイント解説
  • 同一月(1日から月末まで)にかかった医療費が⾼額になるとわかっていれば、事前に健康保険に申請して「限度額適⽤認定証」の交付を受けましょう。これを病院の窓口で提⽰すれば、自己負担の上限額を超えた⽀払いはありません。安⼼して治療が続けられるように、「限度額適⽤認定証」を⼊⼿しておきましょう。
  • ⾼額療養費は、複数の医療機関で⽀払ったものを⾜して上限を超えると払い戻されます。同じ健康保険に加⼊していたら家族の医療費も⾜すことができます。
❷ 特定医療費(指定難病)助成制度(難病法)(「軽症高額」、「高額かつ長期」の場合)

BさんのNMOSDの症状は、軽症だったため医療費助成の対象になりませんでした。しかし、NMOSD治療にかかる医療費総額が毎月33,330円(3割負担の場合の自己負担約10,000円)を超えています。3ヵ月以上たてば「軽症高額」の基準を満たしますので、申請して認定されれば医療費助成の対象となります。Bさんの場合、毎月の自己負担の上限額は10,000円です。

さらに、NMOSD治療にかかる医療費総額が50,000円(2割負担の場合の自己負担約10,000円)を超える月が12ヵ月中に6回以上あれば、高額かつ長期の対象となり、申請の翌月からさらに負担が軽減します。Bさんの場合、毎月の自己負担の上限額は10,000円から5,000円に減ります。※「総合障害度評価尺度(EDSS)で4.5以上」または「視覚重症度がⅡ、Ⅲ、Ⅳ度」のどちらか、または両方に該当する場合、「重症」とされます。Bさんの場合、日常生活に支障が出る障害が残らなかったため「重症」には該当しませんでした。

特定医療費(指定難病)助成制度(難病法)とは 医療費の自己負担が2割になる。ただし、所得に応じて自己負担の上限は異なる。処⽅薬も対象。 申請先:都道府県中核市の保健所など

ポイント解説
  • 助成の対象となるのは申請をした日からです。医師の診断書など必要書類をそろえるのに時間がかかる場合がありますので、NMOSDと診断されたら早めに申請の⼿続きをしましょう。
  • 申請後に審査があり、承認されてから受給者証が届くまで数ヵ⽉かかりますが、その間は⾼額療養費制度を利⽤します。

    *申請日までさかのぼって自己負担の上限を超えた⾦額は払い戻されます。

❸ 傷病手当金

BさんのようにNMOSDで休職し、給与が得られない場合は、健康保険に傷病手当金の申請をしましょう。病気の治療のために3日間連続して欠勤した後、4日目以降から最長1年6ヵ月間まで支給されます。原則として、病気やケガで欠勤した日1日ごとに、標準報酬日額の3分の2が支払われます。ただし、会社から傷病手当金の金額よりも多い給与が支給された場合、傷病手当金は支給されないため注意が必要です。*傷病手当金は同一の傷病で1回のみ受給可能です。

傷病手当金とは 会社などに勤めていて、一定基準を満たす場合、仕事を休んだ期間の合計1年半の手当が支給される。 申請先:加入している健康保険など

❹ ハローワーク

ハローワークでは、難病の方も障害者相談窓口などで相談ができます。各都道府県には1~2名程度の難病患者就職サポーターが配置され、企業や支援機関と連携して難病の方の就労を支援しています。病状が不安定だったり、薬の副作用があったり、障害が残ったりしているため就職が難しい方の相談に乗ったり、求人情報を紹介したりしています。

治療と仕事の両立支援とは 合理的配慮を受けることで、病状の変化や薬の副作用、障害と上手く付き合いながら仕事をすることができる雇用形態や福祉就労などがある。

就業形態 一般就労(正規雇用、非常勤雇用) 福祉就労 その他
一般企業
・一般雇用
・障害者雇用(障害者手帳あり)
就労移行支援事業所
就労継続支援A型事業所
就労継続支援B型事業所
自営業、内職
対応する
法律および
相談窓口
労働基準法相談窓口:ハローワーク 障害者総合支援法相談窓口:市町村の障害福祉担当課 ※就労継続支援A型事業所は労働基準法適用

※表は横スクロールできます。

ポイント解説
  • NMOSDの治療を受けて病気と上手く付き合い、職場で合理的配慮を受けながら就労するための支援を受けることができます。
  • 今の業務内容や就労時間などを調整したい時は、病院のソーシャルワーカーや産業保健総合支援センターの保健師に相談しましょう。
  • 仕事を探したい時は、お近くのハローワークの障害者相談窓口で相談しましょう。各都道府県には難病患者が相談できる難病患者就職サポーターも配置されています。
❺ 生活困窮者自立支援制度

Bさんのようにさまざまな事情により経済的な問題を抱えて生活に困っている方に対して、個別の支援計画を作成したり就労を支援したりするなど自立に向けたサポートを行っています。

生活困窮者自立支援制度とは 生活に困った時に身近にある総合相談窓口。住宅確保給付金の支給や相談支援、就労支援などで自立した生活を目指す。 問い合わせ先:市町村の相談窓口

「NMOSD患者さんのお悩み別 医療・福祉制度」を一覧化した図は、下のリンクよりご確認いただけます。図「NMOSD患者さんのお悩み別 医療・福祉制度」(別窓で開きます)
NMOSD患者さんがご利用いただける医療・福祉制度について、詳しく知りたい方は下のリンクをご覧ください。冊子「NMOSD患者の方のための医療・福祉制度ガイドブック」ご紹介ページへ
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