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最終更新日2024/12/20

Vol.6医療・福祉制度、どんな制度が利用できるの?NMOSD患者さんが利用できる制度・サービス

監修:
群馬パース大学 看護学部 看護学科 講師
認定難病看護師・保健師
川尻洋美 先生

第2回
「医療・福祉制度活用モデルケース」

医療・福祉制度やサービスはいつ、どういったタイミングで利用できるのでしょうか。

以下の2つのモデルケースから、ご自分の場合にも利用できそうな制度や制度利用のタイミングなどを参考にしてみてください。

NMOSDの患者さん 
医療・福祉制度活用モデルケース1
重い後遺症が残ったAさん(30代)の場合

  • 家族:夫(40代)、子ども(6歳)
  • 職業:専業主婦
  • 世帯の所得の階層区分:一般所得Ⅱ(約370万円~約810万円)

Aさんは4年前に足のしびれなどの症状が現れ、検査入院を経てNMOSDと診断されました。入院中に両足に麻痺が現れましたが、治療とリハビリテーションである程度回復し、退院後は子育てに追われる日々でした。治療を続けながら、子どもが幼稚園入園後はパートで仕事をしようと考えていたAさんですが、1年後に再発し、再び入院することになりました。

再発後は両足に麻痺が残り、車いすの利用や家をバリアフリーにするためのリフォームなどが必要になりました。そのため、入院中に障害者手帳の申請を行い、退院に備えて環境を整えました

現在、Aさんは日常生活上のサポートを必要としています。また、介護など福祉サービスにかかる経済的な負担について不安を感じています

Aさんが利⽤できる医療・福祉制度
❶ ⾼額療養費制度/限度額適用認定証

Aさんのように⼊院してNMOSDの検査・治療を⾏うと、医療費が⾼額になる場合があります。医療費が⾼額になったら、加⼊している健康保険から払い戻される⾼額療養費制度が利⽤できます。これは⼀定額以上の医療費がかからないようにして、医療機関の窓口で⽀払いの負担を軽減するためのものです。加⼊している健康保険に「限度額適用認定証」を申請して入手し、病院に提示しましょう。
※マイナ保険証を使う場合は「限度額適用認定証」の手続きは不要です。

⾼額療養費制度とは 被保険者ごとの所得による上限を超えた医療費の自己負担分が払い戻される。 申請先:健康保険や国⺠健康保険など

ポイント解説
  • 同一月(1日から月末まで)にかかった医療費が⾼額になるとわかっていれば、事前に健康保険に申請して「限度額適用認定証」の交付を受けましょう。これを病院の窓口で提⽰すれば、自己負担の上限額を超えた⽀払いはありません。なお、マイナンバーカードを健康保険証として使う場合(マイナ保険証)は、「限度額適用認定証」の手続きは不要となります。
  • ⾼額療養費は、複数の医療機関で⽀払ったものを⾜して上限を超えると払い戻されます。同じ健康保険に加⼊していたら家族の医療費も⾜すことができます。
❷ 特定医療費(指定難病)助成制度(難病法)(「⼀般」の場合)

AさんのNMOSDの症状は重症だと診断され、医療費助成の申請をしたところ「⼀般」に認定されました。「⼀般」のAさんの場合、毎⽉の自己負担の上限額は20,000円になります。 ※「総合障害度評価尺度(EDSS)で4.5以上」または「視覚重症度がⅡ、Ⅲ、Ⅳ度」のどちらか、または両⽅に該当する場合、「重症」とされます。Aさんの場合、⾞いす⽣活がEDSS7.0〜になるため「重症」とされました。

特定医療費(指定難病)助成制度(難病法)とは 医療費の自己負担が2割になる。ただし、所得に応じて自己負担の上限は異なる。処⽅薬も対象。 申請先:都道府県中核市の保健所など

ポイント解説
  • 助成の開始時期は、「重症度分類を満たしていることを診断した日(重症化時点)」からです。ただし、申請日からさかのぼれる期間は原則1ヵ月です。医師の診断書など必要書類をそろえるのに時間がかかる場合もありますので、早めに申請の手続きをしましょう。
  • 申請後に審査があり、承認されてから受給者証が届くまで数ヵ⽉かかりますが、その間は⾼額療養費制度を利⽤します。

    *「重症度分類を満たしていることを診断した日」までさかのぼって、自己負担の上限を超えた金額は払い戻されます。

❸ ⾝体障害者⼿帳

Aさんは下肢に⿇痺があるため、⾝体障害者⼿帳の認定基準に該当する可能性があります。障害者⼿帳が交付されると、さまざまな割引や減免が受けられます。

⾝体障害者⼿帳による税⾦の減免や各種料⾦の割引とは ⾃動⾞税、NHK受信料、⾼速道路、公共交通機関の利⽤料の減免、施設利⽤料の割引などが受けられる(⾃治体ごとの案内を参照)。 申請先:市町村の担当窓口

❹ 障害者総合⽀援法の障害福祉サービス

Aさんのように障害のある⽅や難病の⽅は、障害の程度によって、障害者総合⽀援法の障害福祉サービスを利⽤できる場合があります。
Aさんは⽣活するうえで⽀援が必要です。夫には仕事があり、⼦どももまだ6歳ですので、下記の障害福祉サービスを利⽤することにしました。

  • 家事や買い物、入浴などの⼿伝い → 居宅介護(ホームヘルプ)
  • 外出する時のサポート → 移動⽀援
  • ⾞いすの購⼊ → 補装具購⼊費の⽀給
  • ⽞関などの段差解消のためのリフォーム → 日常⽣活⽤具給付等事業 (折りたたみスロープ、据え置き型の⼿すりなどの移動・移乗⽀援⽤具給付、⼯事を伴う住宅改修費給付)

障害者総合⽀援法と介護保険法とは 居宅介護(ホームヘルプ)、同⾏援護(視⼒障害者の外出時の介護)や訪問介護・看護・⼊浴、⾝体介護、通所介護、リハビリ、福祉⽤具・補装具の⽀給やレンタルなど。 申請先:市町村の担当窓口

ポイント解説
  • NMOSDの患者さんが家でヘルパーによる介護、歩⾏補助つえや⾞いすなどを必要とする場合、障害者⼿帳を持っていなくても、障害者総合⽀援法による障害福祉サービスを受けることができます。
  • 64歳以下では障害者総合⽀援法(NMOSDは⾝体障害者⼿帳なしでもOK)、65歳以上では介護保険法を優先的に利⽤し、サービス内容に応じて障害者総合⽀援法を利⽤。
❺ 障害年⾦

Aさんのような場合、病状や障害の程度によっては、障害年⾦を受けられる可能性があります。会社員の夫に扶養されており、国⺠年⾦の第3号被保険者であるAさんが受けられるのは障害基礎年⾦です。

障害年⾦とは 病気のために⽣活や仕事が制限された時の経済的保障を受けたい場合に、一定の条件下で受けられる。 請求先:市町村の担当窓口または年⾦事務所

「NMOSD患者さんのお悩み別 医療・福祉制度」を一覧化した図は、下のリンクよりご確認いただけます。図「NMOSD患者さんのお悩み別 医療・福祉制度」(別窓で開きます)
NMOSD患者さんがご利用いただける医療・福祉制度について、詳しく知りたい方は下のリンクをご覧ください。冊子「NMOSD患者の方のための医療・福祉制度ガイドブック」ご紹介ページへ
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