視神経脊髄炎（NMOSD）の情報を提供し、患者さんと家族の
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提供：中外製薬株式会社
最終更新日2025/12/09
患者さんが中心の医療の実現に向けて
～シェアード・ディシジョン・メイキング（Shared Decision Making：SDM）と「正直ノート＋」（後編）
「短い診療時間で症状や悩みについて相談するのが難しい」、「今の治療は自分に合っているのだろうか」と思ったことはありませんか？
視神経脊髄炎スペクトラム障害（NMOSD：Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders）の治療は生涯を通して続くため、患者さんと医療従事者が一緒に治療方針を決める意思決定のプロセスである「シェアード・ディシジョン・メイキング（Shared Decision Making：SDM）」を行いながら、定期的に治療を見直すことが大切です。
SDMを実践するうえでお役立ていただきたいのが、2025年4月に改訂した「正直ノート＋」です。疑問や不安に思っていることの整理、診療時のコミュニケーションでご活用いただける内容となっています。
患者さんや専門の先生にお集まりいただき、新しくなった「正直ノート＋」の活用法や長期的な人生のデザインと治療目標などについて話し合う座談会を開催しました。当日の内容を前編／後編にわけてレポートします。
開催日時：2025年9月6日（土）14:00~16:00
開催場所：中外製薬株式会社 本社
〈参加者〉
NMOSD患者さん：
- 坂井田真実子さん
- NPO法人日本視神経脊髄炎患者会 理事長、ソプラノ歌手
- 岡本愛さん
- NPO法人日本視神経脊髄炎患者会員
- 高野翔さん
- NPO法人日本視神経脊髄炎患者会員
医師：
- 深浦彦彰先生
- 埼玉医科大学総合医療センター 脳神経内科 客員教授
- 河内泉先生
-
新潟大学大学院医歯学総合研究科総合医学教育センター
新潟大学医歯学総合病院・脳研究所 脳神経内科 准教授
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「正直ノート＋」活用法①：患者さんの思いを共有する
坂井田さん 「正直ノート＋」に記載した内容は図2の通りです。さまざまな疑問が出てきました。
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岡本さん 私は図3です。今回は“正直”に書いてみました。
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高野さん 私の場合は、図4の通りです。
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今日からできる！医師とスムーズにコミュニケーションを取るためのアドバイス
①医師への質問を事前に絞っておこう
岡本さん NMOSDを発症する前は、咳や発熱など、医師が見ればわかる症状で受診することが多かったので、医師とのコミュニケーションで困ったことはありませんでした。しかし、NMOSDの診察では聞きたいことを聞き逃したり、何を伝えたらいいのかわからなくなったりしたことがあります。「正直ノート＋」の内容は医師の知りたいことが凝縮されているように感じますので、質問の整理に使えます。
また、以前SNSで深浦先生が「聞きたいことが5個だと多すぎるから、3個に絞りましょう」とおっしゃっていたのを聞いてからは、外来待合室の混み具合で質問数を調整するようにしています。
メモには必ず日付を入れており、医師が時系列を知りたいときにすぐ答えられるようにしています。ただ、困っている症状がNMOSDと関係があるのかないのか患者側で判断できず、「相談していいのだろうか」と悩むことがあります。
深浦先生 医師が診察時間内で知りたいことを限定していると、明らかにNMOSDに関係がある内容を聞き出そうとするので、会話の歯車がかみ合わなくなることがあると思います。
短い時間で医師と信頼関係を構築するのは難しいことです。信頼関係は時間をかけて育まれるものです。焦らず、少しずつ“熟成”させていく気持ちが大切です。ただ、患者さんが質問するポイントを絞れば、短い時間でも答えを得るのは可能だと思います。「正直ノート＋」に書き込んでおき、「今日聞くこと」を決めて医師と会話するとよいのではないでしょうか。
②質問を“見える化”しよう
深浦先生 伝え方に悩んでいる方は少なくないと思います。患者さんが感じていることを“形にして共有する”ことが、解決への第一歩になります。私が外来で大切にしている3つのステップを紹介します。（図5）医師に対してでも、同じ病気の患者さん同士でも使える方法です。
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高野さん 私は言語化が得意ではないので、あらかじめ困りごとを書いておけば、伝えることへの不安や負担が軽くなりそうです。
河内先生 深浦先生が「同じ病気の患者さん」とおっしゃいましたが、私はピアサポートの重要性をお伝えしたいです。ピアサポートの「ピア」は仲間を意味しており、患者さん同士が知識や気持ちを共有しながら、支え合っていきます。私の経験では、抑うつ症状がみられた入院患者さんが、同室の患者さんに寄り添ってもらって立ち直ることができたケースがあります。
深浦先生 困りごとは何もしないでいると解決しませんから、見える化をしたり、身近な人に話してみたりするなど一歩踏み出してみましょう。
河内先生 高野さんが「正直ノート＋」に記載した「完治の可能性」は、気になるトピックですよね。研究の最前線にいる立場で申し上げると、今後、NMOSDの完治に近づく治療法が登場する可能性はあります。ぜひ、人生を長い目でポジティブに考えていただければと思います。その際、一助になるのが「正直ノート＋」に盛り込んでいる「人生デザイングラフ」です。
「正直ノート＋」活用法②：「人生デザイングラフ」で長期的なプランを考える
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記入例通りでなくても、自由に書いてOK！
岡本さん 「正直ノート＋」に盛り込まれている「人生デザイングラフ」のページ左下に記入例があるのですが（図6参照）、あまりとらわれず、好きに書いてもいいですよね。
坂井田さん 私は「正直ノート＋」をPDFでダウンロードして、タブレット端末のアプリに入れて自由に書きました。何度も書き直せるので便利です。
人生デザイングラフを書いてからの気づき
岡本さん 私は図7の内容を書いてみました。
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発病当初は落ち込んで、物事をネガティブに考えていました。しかし、患者会などで人とつながっていく中で「5000人の第九」というイベントに誘われ、歌ってみたことをきっかけに「私、もっと外に出られるのかもしれない」と前向きになれました。そんな中で「人生デザイングラフ」を書き、やりたいことを整理できたのがよかったです。
深浦先生 「人生デザイングラフ」にワクワクすることを書き込んで「目標に向けてこうしよう」と思える点がよいですね。
河内先生 病気になったからこそ、わかってくることもあります。ポジティブに捉えることを忘れないでいただきたいと思います。
高野さん 私はまだ具体的なイメージが湧いていないので、今回は書くのを控えました。
深浦先生 書く/書かないも自由です。
岡本さん 私は、図3を書いて「私は治療が重荷で、嫌いだったんだ」と気づきました。その後、「理想を叶えるために大事なこと」（図6）を考えたときに、「再発は絶対にしたくない」と思ったんです。そのためには「治療をしっかりすること」が大事だとわかり、嫌な気持ちを覆してでも治療しようと決めました。
坂井田さん 私は、図8のような内容を書きました。
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書いているとアイデアが出てきて、人生をデザインする実感が湧いてきました。書いた内容をパートナーに見せたら、未来にワクワクしながら会話ができて、うれしかったです。
読者の方々へメッセージ
高野さん 「正直ノート＋」を日記のように習慣づけて書くと、過去の状態を振り返りやすいですし、自分が今どういう状況にいるのかも把握しやすいと思いました。
岡本さん 私は発病直後のショックが強く、ネット検索できない時期がありました。そういう人は、自分だけではこのノートに出会えません。医師から「このノートをどうぞ」と言っていただけると有難いです。
坂井田さん 医師に伝えたいことは事前にまとめておくと短い診察時間でも相談しやすいと思います。NMOSDに関する悩みや希望についてポイントがまとめられている「正直ノート＋」を書き、医師に「後で読んでください」と言って渡すのもよいと思います。
深浦先生 「正直ノート＋」は、NMOSDに関する正確な情報だけでなく、将来を見据えてライフプランを考えるきっかけにもなります。治療と人生の両面で、“自分らしさ”を見つめ直す道具として活用していただければと思います。
河内先生 ご自身オリジナルのノートに仕上げていただければと思います。患者さんたちの声を踏まえて、「正直ノート＋」を発展させていく必要性も感じています。
後列：河内先生（左）、深浦先生（右）