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最終更新日2024/05/27
Vol.2NMOSDではどのような治療が行われるの?急性期治療、再発予防治療、対症療法について
- 監修:
- 医療法人セレス さっぽろ神経内科病院
理事長 深澤俊行 先生
第2回
「NMOSDの対症療法と治療の進歩」
生活の質の向上が期待できる、対症療法について
NMOSDの発症原因は現時点ではわかっておらず、残念ながらこの病気を完全に治す治療法はまだありません。しかし、治療を継続しながら病気とうまく付き合い、長期にわたって仕事や学業、家庭生活などを充実させている患者さんも大勢いらっしゃいます。
痛みやしびれ感、排尿・排便障害、疲労・倦怠感などの症状は、対症療法による改善が期待できます。遠慮せず主治医に相談してみましょう。NMOSDそのものを治すことはできなくても、困っている症状を和らげることができれば、自分らしく生活を送る助けになるのではないでしょうか。ここではNMOSDの患者さんからの訴えが多い症状と、それらに対する対症療法についていくつかご紹介します。
- 注意)
- ここでご紹介する治療法は対症療法であり、NMOSDそのものを治すものではありません。
痛み・しびれ感
NMOSDの痛みにはさまざまな種類があるため、それぞれの痛みについて痛みが起こる原因を探っていき、痛みの原因に応じた治療が行われます。痛みやしびれ感に対して、まずは薬物治療が行われます。1種類の薬では効果が乏しく、複数の薬を併用することで効果が期待できる場合もあります。飲み薬で改善されない痛みには、神経に局所麻酔薬や神経破壊薬を直接注射して痛みを取る三叉神経節ブロックや、ガンマナイフ放射線治療が行われることもあります。
薬物の治療だけではなく、マッサージや保温でも
痛みなどが和らぐことがあります。
痙縮(けいしゅく;手足が突っ張って動きにくい状態)
リハビリテーションが中心で、運動療法や電気刺激などの物理療法を行うほか、車いすや歩行器、杖など補装具の使用をすすめられることもあります。症状に応じて筋弛緩作用のある飲み薬や、注射剤での治療が検討されます。
ご自身に合った治療法を
主治医と相談していきましょう。
視覚症状
視覚の後遺症に対して有効な薬はありませんが、視覚症状に対する補装具や、視覚障害がある方に向けたさまざまな工夫や情報は眼科医がよく知っています。補装具やさまざまな工夫を日々の生活で生かすことで視覚症状による不便や不自由を軽減することができるでしょう。詳しくは眼科医にご相談ください。
排尿・排便障害
急に強い尿意を感じて頻回にトイレに行きたくなったり(頻尿)、尿が漏れてしまったり(尿失禁)、尿が出づらいなど排尿が困難な場合には、それぞれの症状や原因に応じた薬物治療や、体操、食事の注意などを組み合わせて対応します。排便障害には便秘薬や整腸薬、浣腸、腹部マッサージのほか、食物繊維を多く含んだ食品を取るといった食事の工夫などが有効です。尿失禁や軽い便失禁がある場合は市販されているパッドも役に立ちます。また、残尿が多い方は自己導尿という方法もあります。詳しくは主治医にご相談ください。
疲労・倦怠感
治療には疲労や倦怠感に効く薬剤を使用することがありますが、まずは日常生活での生活リズムの変更や休息をとることが重要です。また、疲労の原因となっている症状がわかればその症状に対する治療を行います。治療で使っている薬剤が原因で疲労や倦怠感が出ていると考えられる場合には、他の薬に変更するといった対応も検討されるでしょう。
NMOSDの解明とともに進歩する再発予防治療の薬剤
NMOSDは個人差がとても大きい病気です。症状の出方も病気の経過も、患者さん一人ひとりで違うため、治療の内容や実施のタイミング、治療の進め方も患者さんごとに異なります。治療を継続するには、治療の内容はもちろん、治療の必要性をきちんと理解していることが大切です。
2004年にNMOSDの病態に関与しているとされるアクアポリン4という抗体(AQP4抗体)が発見されたことで、近年、NMOSDの治療が進歩しています。NMOSDを完全に治すための治療法は現時点ではまだないものの、再発予防治療を継続して、進行を抑えながら、長期にわたり再発を防ぐことで、治療を受けながら仕事や家庭生活を充実させている患者さんもいらっしゃいます。
NMOSDの病態をさらに解明するための研究は現在も世界的に継続されており、新たな治療法が開発されることが期待されています。今後、より良い治療法が登場したときに、より良い状態で受けられることを目指して、しっかり治療を進めましょう。
第2回「NMOSDの対症療法と治療の進歩」のまとめ
- 対症療法では、困っている後遺症や症状を和らげます。困っていることがあれば主治医に相談を
- NMOSDの治療はこれからも進歩します。あなたに合った治療を続けていきましょう
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- 第1回「NMOSDの急性期治療、再発予防治療、対症療法」
- 第2回「NMOSDの対症療法と治療の進歩」