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最終更新日2023/05/29

Vol.1この症状、これからどうなるの?視神経脊髄炎スペクトラム障害の経過について

監修:
東北医科薬科大学 医学部
脳神経内科学 教授 中島一郎 先生

第2回
「NMOSDの寛解期と過ごし方について」

症状が落ち着く寛解期を継続させていきましょう

NMOSDでは、急性期の治療を終えると、症状が落ち着いてくる時期がやってきます。その時期を「寛解期」といいます。発作時の症状の程度によっては、後遺症が残っている方もいらっしゃることでしょう。この寛解期に病気が進行することはまれですが、再発が起こると、初発時よりも後遺症が残りやすいといわれています1)ので、これから先も今の生活を守るためには、適切な治療で再発を防ぎ、寛解期を継続させることが大切です。

残った後遺症の程度は、人それぞれです。手足や背中のしびれがつらかったり、痛みが強かったりして、後遺症のため自宅で療養されているという方もいらっしゃれば、急性期の治療を終えて退院後、職場復帰して仕事を続けられている方もいらっしゃいます。
寛解期では再発予防の治療を続けながら、後遺症と上手に付き合っていくことが大切になります。後遺症の症状がつらいときは、受診の際に話しやすいよう記録をとっておき、主治医に対症療法などを相談してみるのもよいでしょう。

寛解期の生活とその時期の考え方

自分のできること、できないことを分けて、工夫しながら過ごしていけるといいですね。

  • 「疲れやすくなっているから無理のないスケジュールで仕事をしよう」
  • 「家事はほとんど問題なくできるけれど、夕方になるとしびれが強くなるので午前中に済ませよう」
  • 「料理や掃除、洗濯はできるけれど、長くしゃがまなければならないお風呂掃除は家族に任せよう」 など

大切なのは再発を予防することです

適切な治療により再発を防ぐことができれば、良好な長期予後が期待できるといわれています1)。診断や治療が進歩した最近では、普通に生活できているNMOSD患者さんが増えています2)。そのため、「最近、症状が落ち着いているから」、「しばらく再発していないから」と、再発予防の治療に対する意欲がなくなりかけている方もいらっしゃるかもしれません。一方で、「いつまで治療を続けなければいけないのか」「どうせ治らないのに…」などと悲観的な気持ちになったり、毎日不安に過ごしたりしている方も多いことと思います。治療がつらくなったりしたときは、主治医やあなたを支えてくれる周りの人に打ち明けてみることも大切です。

昨日より症状が重いからといって、必ずしも再発しているとは限りません。気温・湿度や気圧の変化で症状が変わる方もいらっしゃれば、季節の変わり目に症状が重く出る方もいらっしゃいます。体調や精神的ストレスなどで異なることもよくあります。軽い症状の変化であれば、1日安静にして様子をみてもいいですが、目が見えなくなったり立てなくなったりするなどの強い症状の場合は速やかに主治医に連絡しましょう。

第2回「NMOSDの寛解期と過ごし方について」のまとめ
  • NMOSDの寛解期では再発予防の治療を続けながら、後遺症と上手に付き合っていくことが大切
  • 再発を防ぐことができれば、良好な長期予後が期待できる
  • 再発を疑ったら、速やかに主治医に連絡を
  • 気になる症状が1日安静にしても治まらない場合でも早めに主治医に相談を
1)
日本神経学会. 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン 2017. 医学書院. 2017, p 125.
2)
特定非営利活動法人MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ブック第1版. 2018, p 56.