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最終更新日2020/11/10

Vol.3情報を上手に選び取るためにヘルスリテラシーのすすめ

監修:
新潟大学大学院 医歯学総合研究科
総合医学教育センター
新潟大学医歯学総合病院・脳研究所 脳神経内科准教授 河内泉 先生

第2回
「ヘルスリテラシーを高めNMOSDの正しい情報を選択」

NMOSDの情報入手と選択

医療は日々進歩しており、検査や治療法も変化しています。NMOSDの場合、疾患の概念が提唱されたのは2015年のことで、2004年に抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)が発見される前は、日本ではNMOSDは多発性硬化症(MS)の一病型と考えられていました1,2)。現在ではNMOSDとMSは別の病気として診断・治療されていますが、インターネットなどで提供される医療情報の中には古い情報が放置されたままになっているものもあるかもしれません。いつ発信された情報なのか確認するようにしましょう。

また、情報提供にみえて、実は物品の宣伝・販売など営利目的が隠されている場合もあります。情報がどこ(誰)から発信されたものなのか、その情報の根拠となる医学論文や記事、試験データなど引用元が明記されているか、併せてチェックしましょう。さらに特定の情報だけで判断せず、複数の情報を比較して自分に必要な情報を選択することも大切です。

NMOSDの情報として、身近に読むことができるものに、患者さんが書かれているSNSやブログなどがあります。同じ病気の方が書いているものなので、共感できることや勉強になることがたくさんあるはずです。しかしながら、NMOSDの症状は炎症が起こる場所によって千差万別です3)

ブログや体験談などを読むときは、治療への反応の仕方や、その後の経過にも個人差があり、同じNMOSDであっても、その患者さんの経験がすべて自分に当てはまるとは限らない点に注意してください。また、もしかすると発信者が医療情報を間違って理解している可能性もあるかもしれません。体験談を読むときは、個人のフィルターを通して書かれたものであることを意識しましょう。

情報活用の前に主治医の意見を聞く

信頼性の高い情報を入手した後は、その情報を理解・評価して、どう活用するかを考えていくことになります。しかし、医療情報は専門用語も多く、内容を理解するだけでも大変です。その情報が自分に当てはまるものなのか、判断できないこともあるでしょう。

そんなときは、医師や看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、医療や福祉の専門家の力を借りることをおすすめします。専門家の意見を聞くことで情報への理解が深まり、より良い選択につながると思います。主治医から病状や治療法の説明を聞き、わからないことを質問しながら病気や治療への理解を深めていくことも、ヘルスリテラシーの向上につながります。また、主治医はあなたの病状を最もよく理解している存在です。入手した情報を活用する際は、行動する前に主治医に相談し、自分の病状に合っているかどうかを確認してもらいましょう。

NMOSDについて詳しく知ることで、もしかしたらつらい現実に直面し、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、病気についての知識を持たずにただ恐れているだけでは、前に進むことはできません。ヘルスリテラシーを高めて正しい情報を選び取ることは、病気と共に生きていくための大きな力になるのではないでしょうか。

第2回「ヘルスリテラシーを高めNMOSDの正しい情報を選択」のまとめ
  • 医療、検査、治療法、薬剤は日々変化している。入手されたNMOSDの情報はいつ発信されたものですか?
  • NMOSDの症状は人それぞれ。ブログや体験談も個人のフィルターを通して書かれている点を意識しましょう
  • 病状や治療法は主治医が一番わかっています。NMOSDの理解を深めるためにもたくさん質問しましょう
1)
日本神経学会. 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン 2017. 医学書院. 2017, p 2.
2)
日本神経治療学会. 標準的神経治療:視神経脊髄炎(NMO). 神経治療 30(6). 777-794, 2013.
3)
特定非営利活動法人MS キャビン. 視神経脊髄炎完全ブック第1版. 2018, p 19.