最終更新日2025/12/23

2025/10/26開催 みんなに会いに行くin甲府

NMOSDと生きる~最新治療と生活のヒント~

2025年10月26日午後、山梨県で日本視神経脊髄炎患者会(NMOJ)主催の「みんなに会いに行くin甲府」が開催されました。中外製薬株式会社との共催セミナーでは、東京都立神経病院脳神経内科部長の蕨陽子先生から、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)について、病気の基礎知識や最新治療、さらに、生活のヒントなど暮らしに結びつく内容について説明がありました。講演後には、蕨先生監修の小冊子『ことりっぷ やさしい宿と旅』について、制作の裏側を伺いました。

セミナー:NMOSDと生きる ~最新治療と生活のヒント~

● NMOSDを理解する:発症のしくみと治療

NMOSDは、アクアポリン4(AQP4)という水分子の出入りを調節するタンパク質に対する自己抗体(AQP4抗体)が、視神経や脳・脊髄にあるアストロサイトを傷つけることで起こる病気です(右図)。アストロサイトには神経細胞に栄養を届けるなどの役割があります。そのためアストロサイトが傷害されると、神経の伝達にも傷害が広がり、さまざまな症状があらわれます。
再発予防治療に用いられる生物学的製剤は日本国内では5剤使用することができ、それぞれ作用機序や治療方法に特徴があります。
NMOSDは免疫を抑える治療が中心のため、感染症に注意が必要です。そのため、体調の変化に気を付け、早期治療で感染症を悪化させないことが重要です。

● 病気と向き合い、より良い生活をおくるための4つのキーワード

  • ➀ムーンフェイスと和食

    ムーンフェイスを気にして、少しでもやせようと食事量を減らす習慣が摂食障害や骨粗鬆症などにつながることがあります。バランス良く栄養をとることは、病状の安定に役立つとされています。和食が理想的とされ、そのもっとも良い例が病院食です。お腹を満たすのに十分な米飯に魚や野菜を中心としたおかずを組み合わせ、三食ほぼ同じ分量で整えた食事が、体を支える基盤となります。

  • ②セルフメディケーション

    自分の健康に責任をもち、軽い体調の変化には自ら対応するという考え方で、健診やワクチン接種、運動の習慣化など、自分の体調を保つ工夫をすることがポイントになります。

    ※ワクチン接種や市販薬の使用などについては、自己判断をせず、必ず主治医にご相談ください。

  • ③ウェルネス

    健康とは、身体・精神・環境・社会的に調和のとれた状態を指しますが、ウェルネスはその状態を基盤に、自分らしく輝く人生を目指す積極的な生き方を意味します。疾患と共に、人生をより豊かにしていくウェルネスの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • ➃健康の10円玉貯金

    毎日10円玉を貯金して少しずつお金を貯めるのと同じように、心と体にも余力を残して過ごすことをイメージする考え方です。無理をせず、健康を少しずつ貯金していくような気持ちで過ごしてみてください。時にはその貯金を使って、旅行など、やりたいことを楽しむことも大切です。

● 結び ~自分らしく楽しみながら生きる~

NMOSDの研究や治療は進歩を続け、選択肢も着実に広がっています。患者さんを支えるための情報やサポートも増えつつあります。疾患を正しく理解しながら、日々の暮らしの中で、自分らしく心と体を整えて過ごすことが、これからの暮らしを支える力になっていきます。

対談:外出への一歩を応援する『ことりっぷ やさしい宿と旅

講演後には、小冊子『ことりっぷ やさしい宿と旅』の制作裏話をテーマに、蕨陽子先生とNMOJ理事長の坂井田真実子さんが対談を行いました。コロナ禍で外出の機会が減った患者さんが「もう一度外へ出るきっかけ」を見つけられるように――そんな思いから生まれた冊子について、制作当時の視点や現地での気づきが語られました。

左:蕨陽子先生 右:NMOJ理事長 坂井田真実子さん

  • 坂井田さん

    この冊子、かわいすぎますよね。手に取りやすいサイズで、さっとハンドバッグに入れられる。紙も厚手で、ボロボロになりにくいのが嬉しいです。

  • 蕨先生

    ありがとうございます。表紙のイラストは今回のためのオリジナルで、市販の『ことりっぷ』では使われていないデザインなんですよ。

  • 坂井田さん

    医学的な視点で旅行冊子をつくるってすごく斬新です。“Doctor’s advice”を探すのも楽しく、ほっとする一言がたくさん書かれてあって、ありがたいと思いました。蕨先生の「一度に全てをやろうとせず、何回かに分けて少しずつ楽しみましょう」というコメントがまた素敵なお言葉だと思いました。

  • 蕨先生

    駅から宿までの徒歩ルートや観光地へのアクセス、施設のお手洗いやお風呂まで、実際に視察して確認しました。『ここなら無理なく楽しめそうだな』という具体的なイメージがもてました。ただ、場所を紹介することが目的ではなく、宿選びや観光のポイントを知っていただくことで、旅行を計画する際にどのエリアであっても役立ててもらえるようにという意図でつくりました。

  • 坂井田さん

    NMOSDはウートフ現象があるため、出かけて初めてこんなところがつらいんだと気づくこともあります。旅行の際のアドバイスがあれば教えていただけますか?

  • 蕨先生

    温泉を楽しむときは体温が上がりすぎないよう、数回に分けて入るなど、無理をしないことが大切です。旅館での過ごし方が心配な場合は、事前に症状を伝えて相談していただくと安心です。日本の旅館は本当にホスピタリティが高く、旅館の方も『遠慮せずに症状や状況をお話しください』とおっしゃっていました。観光地でも、サービス介助士の資格をもつスタッフが対応しているところもあり、安心して利用できる場所が増えていると感じました。

  • 坂井田さん

    私も電動車いすを使うので、今のお話を聞いて、一歩進んで旅行に行けるかなという気持ちになりました。
    最後に、冊子の完成を受けてのご感想と、読者へのメッセージをお願いできますか?

  • 蕨先生

    読むことで、実際に宿泊してきたように感じられる、旅行のイメージを膨らませる冊子になったと思います。日々がんばっている皆さんも、時にはゆったり過ごし、楽しいことを思い描き、それを実現するために旅に出たりしながら、心と体を健やかに保って過ごしていただければと願っています。

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