2024/12/8開催楽しく学ぶNMOSD Seminar

2024年12月8日午後、都内某所にて、視神経脊髄炎スペクトラム障害（NMOSD）患者さん向けのセミナーを開催しました。

第一部の医師講演では、中外製薬株式会社、NPO法人日本視神経脊髄炎患者会、株式会社おいしい健康共催のもと、神経内科医と眼科医のそれぞれの立場から診るNMOSDについてご講演いただき、疾患の理解を深めました。

医師講演①「神経内科の立場から診るNMOSD」

演者：東京女子医科大学　池口亮太郎先生（座長：清水優子先生）

神経内科医の立場から、NMOSDの基礎知識から最新の治療法についてお話いただきました。

再発予防治療の変化

NMOSDは無治療の場合、80％以上が再発すると言われており^1）、1回の再発でも障害が重篤になる可能性もあることから、急性期治療で炎症を抑えた後は再発予防治療が必要となります。
2023年に多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドラインが改訂され、従来、再発予防治療は経口ステロイド薬が中心でしたが、免疫抑制剤^※や生物学的製剤での治療が推奨されるようになりました^2）。

※NMOSDでは保険適応外
1）Kim SH. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2021 Feb 23;8(2):e947.
2）日本神経学会. 多発性硬化症・視神経髄膜炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. 医学書院. 2023, p199.

患者さんのQOL向上のために

NMOSD患者さんの悩みは多岐にわたります。最も深刻なのは、日常生活や仕事への影響です。視力低下や手足の動きにくさ、排尿・排便障害などの症状により、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。また、無治療の場合、発症から5年で4分の1の患者さんが歩行に介助を要し、4割以上が片眼失明に至る^3）とされており、将来への不安も大きな悩みとなっています。
さらに、治療に伴う悩みもあります。特に、ステロイド治療による容姿の変化（満月様顔貌など）は、患者さんの心理的負担となることがあります。
2019年から登場した生物学的製剤による、再発を抑えながら経口ステロイド薬を減量する治療戦略でこれらの悩みの一部は軽減される可能性がありますが、依然としてNMOSD患者さんは多くの課題に直面しています。早期診断と適切な治療、そして患者さんの心理的サポートを含む総合的なケアが重要と考えます。

3）Wingerchuck DM. N Engl J Med 2022 ; 387 : 631 - 63

医療講演②「眼科の立場から診るNMOSD」

演者：東京医科大学病院　毛塚剛司先生（座長：赫寛雄先生）

視神経炎の特徴について、治療決定におけるShared decision making（SDM）の重要性や他科連携についてお話いただきました。

NMOSDにおける視神経炎の特徴と診断

典型的なNMOSDに関連する視神経炎は、女性に多く、眼痛がなく、視神経乳頭腫脹がないにもかかわらずステロイド治療に抵抗性を示すという特徴があります。診断には、急激な視力低下や瞳孔反応異常などの症状に加え、血液検査、MRI検査などが用いられます。特にアクアポリン4抗体の検出が重要です。

Shared Decision Making （SDM）が治療選択に重要

治療を決める上で重要なのがSDMの考え方です。SDMは、医療者から患者への一方的な情報提供ではなく、患者と医療者が協力して最適な治療法を選択するプロセスです。NMOSDの治療、特に生物学的製剤の選択においては、有効性、安全性、投与方法、投与間隔、QOLへの影響などについて、患者と医師が十分に話し合いながら決定することが推奨されています。

眼科と神経内科の連携の必要性

NMOSDの診療には眼科医と神経内科医の連携が不可欠です。両科の専門医が協力して診療にあたることで、より適切な診断と治療が可能となります。
迅速な診断と適切な治療開始が患者さんの視力予後を左右するため、疑わしい症状がある場合は速やかに専門医の診察を受けることが重要であり、SDMの考え方を取り入れることで、患者さんの満足度向上と治療効果の向上が期待されます。

第二部では株式会社おいしい健康主催のもと、クッキングセミナーが開催されました。疲労感が強くて家事をするのがつらい…というときでも、簡単・時短で作れるオリジナルレシピをご紹介しました。火を使わないのでウートフ現象対策にもなります。