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提供:中外製薬株式会社
最終更新日2024/10/29
Vol.5病気と共に生きる皆さんに届けたい。私たち看護師の想い
- 監修:
- 医療法人セレス さっぽろ神経内科病院 理事 西山和子 先生
NMOSDと共に生きる
皆さんと
ご家族の方へ
看護師として
神経難病の患者さんを支えたい
私は北海道で看護師をしています。縁あって神経内科病院に入職したことから神経難病の看護に携わるようになり、もう40年ほどになります。もともとこの領域に詳しかったわけではなく、入職して初めて神経難病という病気があることを知ったほどです。外科での看護経験が長かったので、「治らない病気とは一体どういうことだろう」と驚きました。
皆さん、病気が治ることを期待して病院を受診します。しかし、その期待に応えることが難しいこともあります。その現実を前にして戸惑いながらも、「私ができることは何だろう?」と、いつも考えています。
何気ない会話からも
患者さんのことを知りたい
NMOSDと診断された患者さんやご家族が病気を受け入れ、向き合えるようになるまでには時間がかかります。個人差はありますが、経験的には1~5年ほどかかる方が多いようです。その間私たち看護師は、患者さん・ご家族が少しずつ病気と向き合い、生活が落ち着いていく過程に静かに寄り添い、支えていきます。
病状だけでなく、生活状態にも目を向けることが大切だと考えています。NMOSDの診断、治療が進歩する現在、私たち看護師の役割は、患者さんが持つ悩みを引き出し、対応策を考え、より良い生活を目指すことを支えることと考えます。特に、患者さんとの何気ない会話は大切な情報源になります。当院では職員全員で患者さんやご家族の方が話しやすくなるような雰囲気づくりを心がけており、患者さんが日常生活で直面している困難や疑問、不安を引き出し、再発のリスクともなるストレスや不都合を改善するにはどうすれば良いか、一緒に考えています。
じっくり話を聞き、
患者さんの “生きる” を支えたい
NMOSDの症状は千差万別で、その程度も異なります1)。また、患者さんの生活環境も、病気の受け入れ方も人それぞれですから、患者さんが抱える悩みを数値化したり、標準化したりすることはできません。一人ひとりに合った対応が必要です。
例えば、NMOSDの症状や障害が原因で仕事の効率が悪くなり、会社に居づらい、このまま仕事を続けていいのだろうかという悩みをお聞きしたときは、「堂々と会社に行って、定年まで仕事を続けてください」と伝えています。一方、専業主婦として家事や子育てに専念し、暮らしていけるようであれば、つらい思いをしてまで働かなくてもよいとも思います。大切なのは仕事を続けるべきか、辞めるべきかではなく、ご本人が “どう生きていきたいと思っているのか” であって、その思いをきちんと引き出すことが看護師の役割であり、患者さんの “生きる” を支えることだと思います。また、さまざまな医療福祉制度も「堂々と利用してください」と伝えています。与えられている権利はきちんと使ってよいのです。
患者さん・ご家族と共に泣き、
共に喜ぶ、人生の “伴走者” でありたい
患者さんやご家族から悩みや心配事を打ち明けられても、これといった解決策が提示できず、ただお話を聞くだけになってしまうこともあります。それでも多くの方は「周囲の人には自分のつらさをわかってもらえないけれど、病院では病気のことを理解している人がいる。病院では “病人” として話ができるのがうれしい」と言って、笑顔で帰っていかれます。
もともとの性格で、人に相談するのが苦手な方もいらっしゃると思います。また、誰かの力を借りなくても、ご自分で病気と向き合っていける方もおられるかもしれません。けれども、長い経過の中で自分一人の力ではどうにもできない場面も出てくると思います。そうなったときに私たちが関わっていけるよう、“入り口” を閉じてしまわないでほしいのです。入り口が閉ざされていると手を差し伸べることができず、患者さんやご家族の孤立につながってしまいます。
困ったときには、私たちがそばにいることを忘れないでいてください。患者さんやご家族の悩みをすべて解決することはできないかもしれません。それでも一緒に考えることはできます。私たちは「一緒に喜び、一緒に泣き、一緒に年を重ねる」患者さんの伴走者でありたいと思っています。
- 1)
- 特定非営利活動法人MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ブック第2版. 2024, p23.
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